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『聴かれた女』タナダユキvs山本政志
          

3/3(土)、山本政志監督が注目する若手映像作家・長谷井宏紀監督をお迎えして、ウィークエンド・トークショーを開催致しました。長谷井宏紀監督のドキュメンタリー作品と、各国を旅した時に撮った写真を紹介しながら、その制作スタンスについても伺いました。 (以下、長谷井宏紀監督=長谷井、山本政志監督=山本と記載させて頂きます)

山本:
映画はどうだった?
長谷井:
上手いなと。
山本:
最近上手さだけで勝負してるから。ちょっと頭弱ってきてるから。
長谷井: うん…。
山本: うんってバカやろう!長谷井とは付き合いが長くて、彼は最初、『W/O』という作品を撮った。当時、道でアクセサリーを売ってた長谷井が転がり込んでた東大の駒場寮が、立ち退きにあって、他にも居候している人たちを外へ追い出そうとした。そういうのを撮ってたんだよね。
長谷井:
たまたま撮ってたビデオをある人に言われて、まとめただけなんですけど。
山本: その後は、浅野忠信が撮った『TORI』の撮影監督やったり、UAのミュージッククリップやったり、セルゲイ・ボドロフ監督の『MONGOL』でスチールをやったり。それと、世界のあちこちに行ってる。今回、何で長谷井を選んだかというと、映画を作る人は面白くないといけないという持論があって、生活、人生を含めてね。そういう人がいつか絶対面白い映画を撮るはずだというのがあって、長谷井の作品は一本も観てないけど、長谷井という人間が面白くて、ずっと付き合っている。映画の世界でも技術的に上手い人はたくさん出ているけど、やっぱりそれだけじゃないんじゃないかというのがあって。モンゴル行った後は、どうしてた?
長谷井: ジャマイカ行ったり、キューバ行ったり、ニューヨークで遊んだり。ジャマイカは2ヶ月くらいいたんですけど、たまたま、向こうで友人になった人のおばあちゃんが死んじゃって、葬式に行ったんです。ジャマイカでは葬式は盛大にやるから、スーツを買えって言われて、お金ないのにスーツ買って行ったら、スピーカーがバーっと積み上げられていて、DJがいて、おじいちゃんもおばあちゃんもみんなダンスしてる。その後、俺の事を聞きつけた、刑務所の中のアーティストっていう人からなぜか電話がかかってきて、面会にきてくれないかと言われた。たかってるんだろうなと思ったけど、面白うそうだから行ったら、刑務所の中もサウンドシステムで、ドカンドカン鳴ってて、みんな踊ってた。
山本: その人と会ってどうしたの?
長谷井: 談笑。片言だったけど、なんか伝わるものはあるから。
山本: フィリピンにはなんで行ったの?
長谷井: 友人のカメラマンの写真を見て行きたいなと。暖かい国に暮らしている人たちって、やっぱり温かくて、町を歩いていたらご飯が出てくるし、すごくよかったです。
山本: フィリピンには俺も行ったけど、人間のパワーに一番感動する。スモーキーマウンティンやパヤタスの人の明るさと生きていく力と。
長谷井: 彼らをかわいそうだと思っている人は、上から見下ろしちゃってる。けど、本当は俺よりぜんぜん毎日を楽しんでる。日系のブラジル人に「ひどいところがある」って聞いて興味本位でお墓に行ったんですけど、墓の上に人が住んでた。けど、聞いてたのと違って、みんな明るくて。墓の上で爆竹鳴らしてるし。(笑)フィリピンの墓は四角くて、ブロック状に積み上げられてて、その墓の上が家とかバーになってる。そこで、酒を飲みながらトランプをやったり。妊婦も寝てた。その後、友達とクリスマスの時期に行って、前の旅のお礼になんかやりたいねってなって、向こうで木材を買って、ゴミでクリスマスツリーを作って、みんなでパーティーをやった。その頃、ひげが胸くらいまであったんだけど、おばあちゃんに十字切られたりとかして。
―会場、笑―
山本: 撮影では、スチールとビデオ、両方回してるの?
長谷井: どっちも。でもやっぱり片方にしないと。今回は写真だけにして、いろいろ人に会いたいなとか。最近写真はデジタルを使ってるんですけど、特に旅の時にはすごくいい。デジタルは撮ってその場で見せてあげて、コミュニケーションできるから、すぐに繋がる。
山本: デジタルはデジタルの良さがある。即効性があるから、思ってすぐに作れちゃうし。
長谷井: 最初は写真で、何回か通う内に映像になる。映像っていきなりは撮れないから。
山本: かなり前に撮ったフィリピンの映像は、対象との距離感がよくわかんない感じだったけど、今はだいぶ変わってると思う。そろそろフィルムも回せば?
長谷井: やりたいですね。映画監督って、状況を作って、そこで人を生活させて、何かを作り出すっていう行為だと思うんです。だから、フィリピンでも、こっちでいい状況を作って楽しめば、絶対いい映画になると思う。
山本: 絶対そう。作る過程をどれだけ楽しむかというのは、俺たちだけの特権で、俺たちのテーマだと思う。作品云々だけで映画をやってても面白くない。いろいろな人と知り合って、映画が生まれていく。お客さんには知ったこっちゃない世界だけど、それは大きいと思う。
長谷井: 『MONGOL』の撮影で面白かったのが、撮影監督がハリウッドの人で、ロスから自分の彼女を呼んでたんだけど、ランチに手作りの弁当を彼女が作って持って来て、みんなで寝転がって、愛し合ってご飯を食べてた。働くときは働いて、休むときには休む。いい気持ちでものを作ってる。
山本: それがいいよね。日本は、監督を神様みたいに祭り上げて軍隊みたいになっちゃうところがある。俺は、上から全部管理するのもされるのも嫌だから、最初に35mmを日本映画のスタッフと撮った時、その点は手強いなと思った。もちろん良いところも悪いところあるけど、他の国は上からどうのというのがない。みんなざっくばらんで。
長谷井: そういう空気のほうが絶対にいいものが生まれると思う。
山本: なんでもストレートに言い合うし、けんかにもなるけど、あっさりしている。
長谷井: いろいろな人の力が集まって1本の映画になる。
山本: そういう意味じゃ、映画の現場って本当に好き。1人で作るんじゃない面白さがあるから。長谷井みたいなのに作ってほしいよ。映画界って、どうしても映画村みたいなところがあるから、そういうのじゃないお前みたいなのに作ってほしい。協力できることは協力するし。強盗以外はね(笑)


『聴かれた女』ウィークエンド・トークショー
<長谷井宏紀vs山本政志>動画レポート

mpeg形式
18.5MB
3.3


長谷井宏紀
『W/O』('01)を監督後、UA『踊る鳥と金の雨』のPV及びショートフィルム『NAIMA』を監督。浅野忠信監督『TORI』で撮影、セルゲイ・ホドロフ監督『MONGOL』で映画スチール担当と、正体不明の活動中。